いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

内緒のこと

午後、息子が学校から帰ってくる。
「ただいま~」と玄関を開けたら、次の言葉は
「ママー、荷物とりにきて~」
わが家のリビングや子供部屋はすべて2階だ。
「えー、面倒くさいなあ。。背負ったまま、階段を上がっておいでよ~」
との言葉を私はぐっと飲み込む。
小さな背に大きなランドセルを背負い
てくてくと歩いて帰ってきた1年生の息子に
母がこんなことを思ってるなんて、内緒のこと。
よき母親ぶって、「お帰り~」と彼を迎える。

最近、妙に上機嫌の中学生の娘。
夏休みで部活を引退し、気分的な余裕ができたのだろう。
そして、何より中学生活最後の体育大会前だ。
お祭り好きの彼女は、少々浮かれ気味だ。
普段は、あまりしゃべらない娘が
ここのところ、急におしゃべりだ。
「ねえ、ねえ、キミは受験生。もう少し落ち着いて勉強しなさいよ~」
との言葉を私はぐっと飲み込む。

思春期の娘が母親と話したがっているんだものと
よき母親ぶって、彼女の話に耳を傾ける。
内心、「勉強せい!!」と思ってるなんて、内緒のこと。

こうして、いくつもの内緒ごとを抱え
母は、日々を生きているのだから
子どもだって、同じこと。
言葉にできる内緒ごととか、言葉にできない思いの内緒ごととか
抱えながら、生きているし
それが、ふつうのことだと思う。

だけど、ときどき、
「どうして内緒にしてるの!!」
「はっきり言わなきゃわからないのよ!!」と
子どもに対して怒りが収まらない時がある。
そうやって、怒って、子どもから言葉を引き出し
納得して、解決したことなんて
思えば、皆無に等しいかもしれない。

「親は子どもと何でも話せる関係を築くよう努力しましょう。」
これは、子どもの言葉を聞くことで
子育ての不安を解消しようとする親の身勝手な行動かもしれない。

なぜなら、言葉が思いのすべてではないし
言葉には、容易にうそやごまかしをちりばめられるし
なにより、その言葉を発する子どもが
自分の胸の内にうそをつくことだってできる。

だから、子どものそっと抱えた内緒ごとの思いを
引っ張りだすことに親子間のコミュニケーションの
重きを置くとしたら、それは、まちがっていると思う。

言葉によってコミュニケーションが成立するなんて、、
そんな甘い幻想を捨てよう!
私は今日、固く誓ったのである。

なぜって!?
それは、今朝。
機嫌の悪い娘から、その機嫌の悪さのわけを
聞き出そうと、不機嫌さを言葉にさせようと
叱ったからである。

その時の彼女の思いも、きっと内緒ごとだったんだ。。
どうして、黙って見守ってあげられなかったんだろう。。
そう、深く反省したからにほかならない。