俗世のいろんな悩みに著者が答えていくというスタイルの本。
「ワタシだけじゃないんだな」と思えることがたくさん。
一見深刻な悩みも、痛快な回答に逆にホッとさせられるのは
寂聴先生の言葉が、さっぱりしていながら、優しさにあふれているからだろう。
相談者にべったり寄り添うでもなく、突き放すのでもなく
すべての悩みに絶妙な距離感で答えが返ってくる。
たとえどんな人でも、その人の存在を常に肯定する。
建前じゃなくて、心の底から。
例えば、生活に何の変化もなく、自分への嫌悪感と孤独感に悩む専業主婦の悩みに対して寂聴先生はこう答える。
「専業主婦になる才能がないからね、外に出て働いたり、私のように変な小説家になったりするんです」
もし、相談者の言葉を真に受け
「社会とのつながりを」とか「少し働いてみては」とか
「ボランティアでも」、、なんて答えが返ってきたら
相談者は「わたしだけなんだな」と孤独感を強めることになるだろう。
ここ最近は、共働き家庭が増え、働く女性が増え、家事や育児をしながら働いても当然、働かざる者食うべからず的な空気は、社会構造の変化であっという間に巷に広がった気がする。
社会が作り出した空気は、自分の生き方を悩ませる。
自分はおかしいのか、と。
悩みは、自分だけのものになってしまいがち。
自分だけが苦しんでいる。みんなの中で自分だけが違うのではないかと。
読後、タイトルの「あなただけじゃないんです」が
「あなたはあなたのままでいい」と見えてきた。