いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

「竹中平蔵 市場と権力「改革」に憑かれた経済学者の肖像」佐々木実

 

正規雇用、派遣労働を広げ

郵政民営化を推し進め

露骨な新自由主義を日本に広めた張本人

竹中平蔵」の半生が

関係者の証言をもとに描かれた本作品。

 

2013年に刊行され

第45回大宅壮一ノンフィクション賞

第12回新潮ドキュメント賞を受賞している。

 

政商と揶揄される竹中平蔵への

ネット上でのバッシングを見て

竹中は、特別な人なんだと思っていた。

 

しかし、この本を読んで

竹中平蔵は、特別な人では、なかった。

逆に、こう思った。

あ~、こういう人っているよね、、

 

いかにも全体のことを考えているふりをして

実は、自分の損得だけで動いている人

人の手柄を平気で横取りする人

経歴や肩書をその場その場で上手に利用する人

時勢により人付き合いを変える人

人を裏切っても平気でいられる人

 

このような人がいても

たいていは、人生のある段階で誰かに化けの皮を

はがされてしまうことが多い。

なにより、人間は動物なので

相手に邪悪なエネルギーを感じたら

わが身の危険を感じ、関係性を断つはずである。

 

しかし、これは、社会が正常に機能している場合のことかもしれない。

 

竹中が、政治家に取り入り

権力者の権力を上手に操りながら

自ら権力を手中に収めていけた背景には

二つの理由があると思った。

 

1つ目は、バブル崩壊後、日本社会が混乱を極め

救世主的なものを求めていたこと。

2つ目は、竹中が近づいた政治家たちが、2世3世議員で

社会経験や生活感覚に乏しく、人を見る目がなかったこと。

 

竹中平蔵は、日本社会が生み出した呪いのようなものかもしれない。

 

彼は、権力や権威を手に入れ、社会的には成功を収めたことになるのだろうが

それと引き換えに、人間としての大事な何かを一つずつ失っていったように思える。

タイトルの通り、彼は、本当に改革に憑かれている。

 

小泉政権以降も、竹中が、権威をふるうことができたのは

竹中が、国民の生活を顧みず、社会を壊してきたからに他ならない。

私たちは、竹中のような人間を権力の中枢に置いたらどうなるかという

壮大な社会実験を受け入れてしまった。

その代償はあまりに大きかった。

 

長引く不況

コロナ対策の不手際

円安による物価高

少子高齢化の弊害

政治、経済、教育の荒廃は

 

安倍元首相銃撃で

日本社会は再び、混乱の様相を呈している。

 

偶然か必然か、時を同じくして

パソナ会長を退任し

再び注目を浴びている竹中平蔵

 

自分たちの手にくらしを取り戻すために

日本社会がなぜこうなってしまったのか

私たちは、もう一度確認する必要がある。

 

本著は、今こそ、また、読んでおくべき本なのかもしれない。