いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

投資の大原則

私の実家は、どこからどう見ても貧乏だった。
ところが、母のお金の価値観はその貧乏状況と反比例していた。
彼女は、大胆にお金を使う人だった。

貧乏なのに、母がお金を使えたのは
支出に収入が満たなければ
借金をし、キャッシングや分割払いを利用し、親兄弟から借りていたからだ。
はっきり言って、多重債務。
サラリーマン家庭ならすぐに破産となるところだが
幸い実家は自営業だったので、自転車操業なるものができた。
母は、自営業者のメリットを最大限に活用していたともいえる。

母が借金をして作ったお金の大半は
教育費として支出されていたのだろうと思う。
おかげで私は、家庭の経済状況には見合わない習い事をさせてもらったし
高校の学費を捻出するだけでもたいへんだったのに
「大学に行きたい!」と言うと、あっさり大学に行かせてくれた。

それなのに、私は、借金を繰り返す母を見て
彼女のような生き方はしたくないと思っていた。
収入に見合う生活をすれば、借金返済にキュウキュウすることもないのにと思った。
稼いだお金を借金返済のために右から左に動かすだけの生活なんてむなしいと思った。
その借金のおかげで希望を叶えてもらっている自分のことは棚に上げて。。

あれから30年。
長女が大学生となり、我が家の家計は教育費の重圧に打ちのめされている。
こんなにもお金がかかるのかとびっくりしている。
お金が飛ぶように消えて行く。。

そうして思った。
あのとき、あの実家の貧乏状態のさなかでも
私を大学に行かせてくれた母の大胆さがなかったら
今の私はないはずだ。

夫がいて、家があって
大学生の娘がいて、遊び盛りの小学生の息子がいる
そんな今の私はいなかったはずだ。

ようやく分かる。
母のあの借金は、投資だったのだ。
人への投資だったのだ。

なるほど、日本の衰退の理由は、まぬけな投資戦略に尽きる。
国債を発行して投資する先は、人でしかないはずだ。
教育予算を削減し、福祉予算を削減し続けている
日本という国の、政治家や官僚の、なーーんと愚かしいことよ。。