いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

回し読み

おととい、娘の部屋を掃除していたら
机の上に、文庫本があることに気づいた。
書店のカバーがついたそれは
一目見て、長い時間手に取られたことが分かった。
カバーの紙は所々うすくなり、すり切れていたからだ。

娘は、ほとんど読書をしない。
小学生のころ、本を与えて
半強制的に読ませたことが
彼女の楽しくない読書体験につながったのではと後悔してから
読書をしない彼女を、野放しにしてきた。

珍しいなあ、いつ本を買ったのだろうと
手に取ってみた。
ブックカバーは、近所の書店のものでは
なかった。
ということは、友達から借りたんだな。
本は、娘が映画を見たいと言っていた
湊かなえの「しらゆき姫殺人事件」だった。
これまでの娘の読書経験で、この本が読めるかどうかは
問わないこととしよう。
まずは、その本を読もうという意欲を褒めてつかわすぞ!!と
少しばかり、うれしかった。
そして、それよりもっとうれしかったのは
娘が、友達からものを借りることができるということだ。

私がこどもの頃は、今よりずっとわずかなお小遣いだった。
田舎だったし、まだまだ、親世代も生活に追われていた。
こどもがひとり一台スマホを持つ時代がこようとは
そのとき、誰が想像いたしましょうか??
そーんな昭和の時代を生きてきたわけでございます。
だから、しょっちゅう、新しいものを手にできないので
誰かが新しい本やレコードを買うと
友達間で、貸し借りするのが日常的だった。

今は、誰もがひとりにひとつモノを持つ時代。
大人に限らず、こども社会も同じだ。
買うことができなければ、レンタルすることや
公共施設で借りるという手段で
誰に気兼ねすることなく
ひととき自分専用の時間を手にする事ができる。

相手に貸してとお願いしなきゃいけない
人のものだから、大切に扱わなきゃいけない
気遣いを経てできる回し読みは、絶滅していなかった!!
(ちょっと、大げさすぎ??)
文庫本を前に、懐かしく、うれしく思ったのでありました。

さて、娘が帰ってきて。
「ねえ、しらゆき姫殺人事件、おもしろい?」と尋ねると、
「うーん、よくわからん。」
案の定の返事が返ってきた。
まだまだ、回し読みが足りんぞよ!!