いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

若者よ、自転車を捨て、バスに乗れ!

この街に引っ越しが決まったとき
なにより楽しみにしていたことがあった。
それは、自転車。

平地の少ない県内で
最も平地の多い土地。
自転車に乗るには、うってつけの街だ。

それまでの人生、自転車と無縁だった私は
それはそれは、とても心待ちにしていたのだ。

天気のよい日、自転車こいで、買い物へ。
時には、ちょっと足をのばして
図書館や、マックにも行った。
風きって走る、この心地よさ。
こうして、ママチャリとともに過ごして
もう10年が過ぎた。

けれど、自転車に乗るには
こんなに楽しい街なのに
私は、この街に
ずっと居心地の悪さを感じてきた。
それは、引っ越してきてすぐのときから
ずっと変わらない。

以前住んでいたところに比べ
この街に流れる雰囲気が、独特なのだ。
なんだか、街も人も
野暮ったくて、気が利かなくて
条件反射的な
人に譲ったり、譲られたりという
感覚に乏しく
我先にみたいな感じが強くて
なんだか、無愛想な街なのである。

これって何なんだろうと
ずっと考えてきて
先日、はっと気がついたのだ。
「自転車だ!」

この街は、学生の自転車乗車率が異常に高い。
市内の高校生は、ほとんど自転車通学である。
交通網の発達していない田舎なので
そういう学生にとって
自転車以外の移動手段は
自家用車となる。
とすれば、この子たちの日常に
公共交通機関が入り込む隙間は
ほぼないと言っていいかもしれない。

自転車通学の生徒を
公共交通機関で通学する生徒と
比べてみると
自分と関係のない人と
過ごす時間が圧倒的に少なくなる。

電車やバスの中は一つの社会である。
いろんな人が
いろんな都合で乗っている。
その中で、自分がどういう立場にあるか
社会の中ではどういう振る舞いをしなければ
ならないかということを
自然と学んでいく。

世の中には、いろんな人がいる。
こんな田舎でもいろんな事情を
抱えた人がいる。
友達と乗っていても
一人で乗っていても
知らず知らず人間観察をしてしまう。

「人の振り見て我がふりなおせ」

社会の縮図の中に身をおき
己を知る。
電車やバスは、なんと格好の場所であろう!!

つまり、自転車通学の生徒は
自分の都合で乗れる気楽さと引き換えに
電車やバスの中で
世間と触れる機会を失っている。
そして、そのまま大人になる。
この街に流れる空気は
自転車が作り出しているのではなかろうか。

さあ、若者よ、自転車を捨て、バスに乗れ!!