いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

とけてゆく

出かけるときに、化粧が決まらず
時間がかかることが
年とともに増えてきた。
そんな時、出来上がった顔は
いつもより、よく見せよう感満載で
ファンデーションはじめ
あらゆるお粉のてんこ盛り。

若いときは、ほとんど化粧なんてしてなかった。
眉毛をかき、リップを塗って
即お出かけで、大丈夫だったのに。。

今では、どれだけ時間をかけても
満足いく顔にならない。なぜなんだろう。。

産まれてすぐの赤ちゃんは
ふにゃふにゃで柔らかくて
この世界と赤ちゃんとの境目がぼんやりしている。

成長し、思春期を迎え、大人になる。
大きくなるにつれ
人はこの世界の中ですっくと立ち上がる。
私と世界の境目がはっきりとする。
10代から20代から30代くらいまでだろうか
たいして努力せずとも
気力、体力が満ちあふれる
人としての輪郭がくっきりと立ち現れる。

そうして、世界と分離したはずの体は
年を重ね、徐々に、たるみだす。
世界からひとり立ち上がり、輪郭を得たはずの体は
再び世界との境目をなくしていく。

ひとつながりの世界からひとつの形が生まれる。
生命は、その途中、自己の輪郭をくっきりと形作るのだが
生命が閉じる時、その形はまたひとつながりの世界の中へ
とけ込んでいく。
液体が固体となっても、また液体に戻るように
最後は、人間のからだも世界のなかにとけていく。
人の体の一生が、そんな風に思えてくる。

だから、最近、自分の顔を鏡で見て、残念ながら、こう思うのだ。
「もう、とけはじめている。。」