いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

あの化け物を。。

父が入院していた時、その病院で化け物を見た。

話すこともできない、動くこともできないお年寄りたちが
のどに穴をあけ、胃に穴をあけ、生きながらえていた。
彼ら彼女らが体を動かせるのは、介護プログラムどおりの時間だけである。
逆に、動きたくない日があっても、介護プログラムどおりの時間に動かされる。
お見舞いにくる人もほとんどいない。
「生きる」ことに生きている本人の意志など微塵もない。

「生きることが至上の価値だ!!」その化け物は叫んでいた。
その化け物は、人間がこの世で迎える最後の時間を、どう生きるか、選ばせてはくれない。
この世に命をつなぐ。ただそれだけが、その化け物の使命なのである。

その化け物は、ずっとタブーだった。
けれど、少しずつ、その化け物に、声を上げる者がでてきた。
しばらく前から、「胃ろう」の功罪が叫ばれ始めた。
そう、生きることは死ぬことなのである。
それは対極ではないのである。
誰もがあの化け物と戦おうとしている。
先日、日本老年医学会が、終末期医療の胃ろうなどの導入に関する見解を示した。