「熱冷まし、ありますか?」
病院で聞かれるたび、ドキリとする。
なぜなら、このとき、いつも嘘をつくからだ。
「はい、あります!」と。
息子が熱をだして、かかりつけの小児科に行ったら
先生は必ず、熱冷ましが手元にあるかどうか、尋ねてくる。
しかし、私は、できる限り、解熱剤を使いたくない派。
熱がでることで、ウイルスやばい菌と必死に戦っているのだから
ここで熱を下げてどうするのよ!!と思っている。
だから、よっぽどでないと使わない。
けれど、そのことを、先生に言えないんだよなあ。
専門家の意見を前に素人考えを叱られそうなんだよなあ。
使わない方が絶対によいのだと断固として言えるほどの
自信もないんだよなあ。
あれこれ迷ううちに、結局嘘をつくことになる。
いやいや、厳密に言えば、嘘ではない。
たぶん、家の冷蔵庫に入っていたはず。。
以前もらった錠剤があったはず。。
確認はしてないけど、あるはず、なのだ。
だから、「はい、あります。」と事実を言っているのだ。
なのに、この後味の悪さは何だろう。
叱られまい、傷つけられまいと
必死に自分を守ろうと
ほんとの気持ちをひた隠して
先回りして、答えを探す。
こどもの頃、大人に叱られまいと
必死になっていた時を思い出す。
40を過ぎても、平然と素知らぬ顔をできぬ自分にため息をつく。
姿形はおばさんになれど、その中にこうして
こどもの頃の自分がそのまま生きていることを
時々、感じるのである。