いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

特別扱い

毎日繰り返される生活の中では
普段使いのモノは、手の中を流れるようにすり抜けていくのだが
ひとつだけ、すんなり流れないものがある。
それは、娘のごはん茶碗である。

数年前、夫が、友人の結婚祝いにと
陶器を買い求めに行った先で
一目惚れして娘にお土産にと買ってきたお茶碗である。
どうして、妻ではなく、娘へのお土産なのか未だに疑問なんだけど。。。
鮮やかな山吹色に真っ赤な金魚が大きく描かれた
そのお茶碗。
5000円ほどの値段だったらしい。
夫のお小遣いで。。。ずいぶん奮発して買ってきたものである。

ちょっと値がはり、かつきれいなお茶碗なので
割ったりしたらもったいないと
お正月などの特別なときに使っていた。
しかし、人生いつ何時、何がおこるかわからない。
そのお茶碗をいつまでも、食器棚の中に
後生大事にしまっておくのが、急にもったいなくなり
普段使うことにした。

しかし、他の家族のお茶碗と言えば、、、
夫のお茶碗は、100円ショップで200円で購入した有田焼。
息子のそれは、大手スーパーで500円程度。
私のは、おばからもらった、給食食器様の強化磁器である。
どれも、普段使うのに、全く何のためらいのないものである。

普段使いになったというものの
娘のそれは、おいそれとためらいがなくならない。
他のお茶碗と重ねたり、食器たらいのなかに
無造作に入れることは御法度である。
すべての食器を洗い終えた後
そのお茶碗をそっと、たらいに入れ
スポンジでやさしく丁寧に洗う。
洗い終えたら、真っ先に布巾で拭く。
まさしく、特別待遇なのである。

いいものを普段使いにすれば
家事をこなすこの手が、もっと優雅な動きになるのだろうなあ。
そんなことを思いながらも
いまだに、「割れたらたいへん、5000円よ、5000円!!」
その声が今も聞こえてやまないのだ。