いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

約束の朝

朝晩の冷え込みに、木々の葉も色づき始めた。
だんだんと冬に近づくこの季節。
夜明け前に起きると、
暖かかったころのもやっとした空気は消え去り
キリッとした空気になってきたのを感じる。
その感覚が、とても好きだ。
それもこれも、早起きが苦でないからこそである。

一方、この季節、
夜明け前のふとんの中の温かさを楽しむ人もいる。
こどもたちである。
まあねえ、私もこどもの頃はそうだった。
母親からいくら起こされても起きられず
バス停まで全速力で走る毎日を送っていたもの。
うん、うん、君たちの気持ちは多いにわかる。
でもね、起きてほしいんだよなあ。
そうやって、無理矢理起こされた、娘、息子の
不機嫌さといったらこのうえない。
一触即発状態である。

先日、いつものように、起こされた息子。
ふとんから出てきたものの、トイレにも行かず
顔も洗わず、こたつの中で丸まっていた。
朝食の準備ができ、夫が
「ほら、ごはん食べよう!」と息子に声をかけると、
彼曰く、「ごはん食べる約束してない!」

思いもよらぬ答えに、大笑い。
そうねえ、朝ご飯を食べる約束して
寝たわけじゃないものね。
そうそう、キミの言うとおり。

息子がそう言って、はたと気がついた。
毎日朝ご飯を食べるのを当たり前のように思っていることに。
訪れる朝。
電気をつけ、顔を洗い、トイレに行く。
エアコンをつけ、冷蔵庫を開け、蛇口をひねる。
お米があり、豆腐があり、卵があり、味噌がある。
ラジオをつけ、カーテンを開け、朝日が昇る。
本当は、何ひとつ約束されていないんだものね。

約束されたものなど何もないのに
昨日と同じ朝を迎えられるなんて
どんなにすごいことなんだろう。
息子の言葉のおかげで
その日のお味噌汁一杯が、ごはん一杯が
梅干しひとつが、目玉焼きが
どれほどおいしかったことか。。。

しばらくすると、息子は
いつも通り、大好きな納豆ごはんを食していた。
幸せだねえ。。。。