いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

暗記学習はよくないか?

大学入試試験が大幅に変わるという。
記述方式を取り入れるとのこと。

小学校から高校までの勉強も
暗記方式の学習から思考能力を問う学習へと
転換が図られるという。

今年4月、長男が塾のオープン模試を受けた。
テストを終え、難しかった〜と嘆く息子。
算数の問題を見てみて、びっくりした。
文章題が、なっ、長過ぎる。
一題につき、5行くらいの文章。
そして、その中身は、関係性と無関係性が
相互に絡み付くような、いかにもいやらしい文章。

去年までは、ここまで難解な文章はなかった。
いくら4年生になったとはいえ、数日前まで
3年生だったのだ。
3月と4月を境にいきなり
読めるようになるわけがない。

なんだっ、これっと思い
ぶつぶつ言いながら
そのテストを見やっていて
はたと合点がいった。
なるほど、これは、まさしく
大学入試試験改革のあおりだ。

経験も知識もない幼い子どもたちに
思考力を身につける学習とは
いったいどんなものになるのだと
不安になった瞬間だった。


団塊ジュニア世代で
ふるい落としが簡単なマークシート方式ど真ん中世代の私は
どの教科も丸暗記で試験を受けてきた。
理解が必要な数学も
演習問題を多くやることで
解法や証明手順を丸暗記しては、試験を乗り切ってきた。

だって、試験を通りさえすればいいのだと思っていたから。
卒業してしまえば、学校で学んだ勉強を
直接使うことは、たぶんないだろうしと。
そして、そのとおり
シグマやベータを使ったことは
卒業以来一度もない。

ただひたすら暗記をしてきた学生時代を
ときどきむなしく思い返すこともあった。
卒業して直接役に立つことはないと
分かっていながら
テストのためだけに
延々と暗記し続けたあの日々は
無駄だったのだろうかと。

けれど、大人になり、ずいぶん経ってから
私はあの日々を肯定的に捉えるようになった。
理解を伴わない丸暗記は
すぐに忘れてしまうし
一見無駄に思えるけれども
それでも確実に言えることは
「暗記する」という能力だけは
着々と磨いていたということである。

思考力の乏しい時期
とりあえず暗記をしたことによって
大人になり思考力がちょっとましになった頃
覚えた知識が、今の理解につながることがある。
子どもたちの勉強を見ながら
「あっ、これってこういうことだったんだあ〜」
と今さらに、ひとりこっそり喜ぶこともできる。

マークシート方式から
記述式へと移行することが
暗記学習の否定へとつながるのではないかと
私はちょっと心配している。

漢字も九九もアルファベットも
何でも覚えることから始まる。
そのときは分からなくても
あとになって分かることが
人生においては、おいおいにある。
いや、そんなことばかりかもしれない。

内容も意味もさっぱり分からないけれど
詩や俳句や短歌や漢文に
公式や年代、人物や出来事を
そらんじられるまで
暗記していくことで
思考力のベースは作られていくと信じている。

土台を作らず、家を建てることはない。
思考するためには知識が必要で
知識を頭の中に蓄積せねばならない。

頭が柔らかいうちに
とにかくどんどん頭の中に放り込む。
暗記するということは
思考力を高めるために最も役に立つ学習法ではなかろうか。

思考力をつけるためにと
考えなければならないと
暗記することを軽く見て
暗記学習を否定したりすることになったら
本末転倒ではないかということを
ちょっと心配している。