いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

いちごの思い出

先日、夫の母方の祖母が亡くなった。
満96歳。
小柄で穏やかな語り口の
上品なおひとだった。

お盆やお正月、帰省の際に訪ねると
いつもお化粧をほどこし
身ぎれいな格好で出迎えてくれた。

初めて会ったのは、夫と結婚する前。
今度結婚することになりましたと
挨拶に行ったとき。

告別式の日、20年近く前のあの日のことを
まるで昨日のことのように思い出した。

祖母はお茶とともに
いちごを出してくれた。
大きないちごが
きれいなガラス皿に盛りつけられ
フォークが添えられていた。
いちごとお皿と祖母の
えも言われぬなんだかとてもお上品な感じに
私は、ひどく心を動かされたのである。

幼い頃から、いちごはヘタを持って
食べる物だと思っていた。
パックからざるに移し
水道水でパパッと洗って、水を切って
そのままみんなで取り合って食べる。
そんな荒っぽい育ち方をしたものだから
こんなに上品な食べ方を目の当たりにして
小さな感動を覚えたのである。

告別式の帰り道、車を運転しながら
長女に、祖母とのいちごの思い出を話した。
自然とほほを涙がつたった。