4月、大学生になった娘が家を出た。
彼女が部屋に残していったものを
整理していたら、一冊の本が出てきた。
安部公房の「砂の女」
安部公房?砂の女?
恥ずかしながら、どちらも知らなかった。
娘には、ほぼ本を読むという習慣がなかった。
娘が持っている本のほとんどは
私がプレゼントしたものと
ワンピースのマンガ本。
それなのに、なぜ、こんな本を持っていたのだろう?
その本を手に取り、読み始めた。
物語の世界の異質さに、何度も本を閉じたくなるのに
どうしても引き込まれていった。
逃げ出したいのに、逃げ出せない。
逃げ出せるのに、逃げ出さない。
読み終えて、娘に感謝した。
こんなおもしろい本に出会わせてくれて、ありがとうと。
しかし、なぜ彼女がこの本を持っていたのか
読み終えて、その謎はさらに深まったのである。