いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

坊ちゃん

なにか本でも読もうかと
本棚を眺めていたら
なぜか自然と手が伸びた。
取り出した本は
夏目漱石の「坊ちゃん」。

本を物色しているとき
坊ちゃんを読もうなど
坊ちゃんを読みたいなど
思ってもいなかったのに
いつ買ったのかも忘れてしまったくらい
カバーがよれよれになった文庫本を
気づけば、私は手にしていた。

そしてページをめくってびっくりした。
「えっ、面白い!!」

息子に「なに笑ってんの?」と
不気味がられながらも
くすくす笑ってしまう。

「坊ちゃん」ってこんなに面白かったんだと
今頃になって初めて気づく。
あまりに面白くて、あっというまに
読んでしまった。

そしてまた、びっくりすることに
これまで、幾度か読んだはずなのに
あらすじさえ覚えておらず
初めて読んだかのような感覚。

あ〜、そうだ。
私はこれまでずっと、色眼鏡をかけて読んできたのだ。
これは、明治を代表する文学作品だ
これは、大作家、夏目漱石の作品だと思って
そこから何か見いださなければならないと
そこに隠された意味に気づかなければならないと。

今回、「坊ちゃん」の物語そのものを初めて楽しんで
私は、この色眼鏡が外れていることに気がついた。

「坊ちゃん」の文庫本に手が伸びたのは
偶然ではなく、必然だったのかもしれない。
色眼鏡が外れたから、ほらほら読んでみてごらんと
「坊ちゃん」に引き寄せられた気さえしてくる。
あなたもようやく、「坊ちゃん」を楽しめるようになったかもしれませんよ、と。

今、私は「我が輩は猫である」を読んでいる。