いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

成長

先日の私の誕生日のことである。
家族の誕生日には、どこの家庭とも同じく
わが家もケーキを買ってみんなでお祝いする。

私の誕生日のケーキは、いつも夫が買ってきてくれるのだが
今回は、あいにく彼は出張で不在。
それで、今年は、自分で自分にケーキを買うつもりでいた。
「ねえ、ケーキ買ってくるけど、どんなのがいい?」と
中学生の娘に尋ねた。
すると、「ママの誕生日なのに、ママが買うなんておかしいよ。
私が、パフェを作ってあげるから。」
まあ、なんてうれしいの!!
娘が母のことを思い、こんなに成長してくれたなんて!!
彼女の言葉に甘えた。

午後、パフェの材料を抱え、娘が帰ってきた。
バニラアイスに、プリン、ホイップクリームにチョコフレーク。
そして、なぜかピザ。
おー、カロリーが高そうなものばかりだ。
「ねえ、この材料費で、ケーキ屋さんのおいしいケーキが買えるんじゃない!?」との
言葉が心に浮かぶ。
おっと、これを口に出してはいけない。
形じゃない、気持ちなのだ、気持ち。
そう、自分に言い聞かせた。

夕食後、娘は、パフェを作り始める。
普段料理をせず、片付け下手の彼女。
作っている過程、作り終えた後の散らかりようが
ありありと想像できた。
「結局、かたづけるのはママなんだからね。」との言葉が心に浮かぶ。
おっと、これを口に出していけない。
見かけじゃない、心なのだ、心。
そう、自分に言い聞かせた。

さて、ようやくパフェが出来上がる。
想像通り、作っている娘の横で
使い終えた材料の袋やボウルをかたづける私。
「ほうら、言わんこっちゃない、ケーキを買った方が楽チンだったのに。」との
言葉が心に浮かぶ。
おっと、これもまた口に出してはいけない。

私がかたづけるそばで、今日の主役である母を待たずして
さっさかパフェを食べ始める娘と息子。
「おいおい、それないんじゃないの!?」との
言葉が心に浮かぶ。
もはや、ココまで我慢した。
それなら、すべての言葉を飲み込んでニコニコして
娘の気持ちをいただこうではないか。
かたづけ終わり、さあ、食べようという頃には
アイスクリームもホイップクリームも溶け始め
混ざりかけていた。
「うっ、あんまりおいしくなさそうー」
いけない、いけない、この言葉もぐいと飲み込む。

あらゆる言葉を飲み込んで、
やっと一言「ありがとね」とだけ言った。
そして、パフェを食べた。
すべての材料の甘さに騙されたのか
かたづけ終わり、放言を飲み込み、ようやく
パフェの前に辿り着いたという満足感からか
パフェはなかなかおいしかった。

そして、今まではよく、相手の気持ちを顧みず
ついつい正直に言い放ってしまいがちだったのに
誕生日のこの一日、自分を飼いならし
感情をコントロールできた数々を思い返し
ああ、ひとつまた年を取ったんだなあと
我が成長をも感じた貴重な誕生日であった。