いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

スイカの夏

実家で一人で暮らす母が、車を手放した。

 

ワタシが生まれた町は、かなりの田舎。

それでも、昔は、車がなくても

そこそこ生活していけるだけのお店はあった。

 

しかし、小泉政権時代の

平成の大合併の大合唱に踊らされたわが田舎町は

隣の市にほぼ吸収される形で合併してしまった。

 

以降、少子高齢化のあおりをまともに受けてしまい

今では、実家近辺で残っているお店は

とうとう一軒だけになってしまった。

そのお店の買い物では、とうてい暮らしに事欠く。

 

なので、母が車を手放して以来

ワタシの車に母を乗せて

月に1,2回ほど買い物に連れて行くようになった。

 

一度の買い物で

2週間からひと月分の食料品や日用品を買うわけなので

老人の一人暮らしとはいえ、かなりの量になる。

 

買い物を終えると、大量の荷物を前に

ひとりでこんなに消費するのか!?と

毎度思ってしまう。

 

6月終わりのある日のこと。

母を車に乗せ、買い物へ行ったところ

一人暮らしなのに、なんでこれを!?

というものを母は買い求めた。

 

それは、「スイカ」。

それも、大玉スイカ

重さは10キロくらいはあったんじゃないかな。。

 

売り場からレジに持っていくのも

レジから車まで運ぶのも

車から家の中まで運ぶのも

もちろん、ワタシの仕事である。

 

ワタシは、スーパーで大玉スイカを買ったことはない。

イカはそれほど好きでもないし

大玉スイカを買えば、大量の生ごみが出るし

それに、大玉スイカが入るほどの冷蔵庫を持ってない。

 

なので、スイカに何の興味もないワタシに

イカを運ばせる母に対して

ちょっと毒づきたくなってしまった。

 

そんなワタシの心の内を知ってか知らずか

母は、スイカを前に、にこにこ顔である。

そうして、家に帰ると

大玉スイカをパッカンと割って

「ほ~ら、半分あげる」とのんきに言う。

 

いやいや、ワタシはスイカはいらんのだ、、と思ったが

そう言ってしまえば、身もふたもないので

黙って、もらって帰ることにした。

 

イカを買ったその日は、めちゃくちゃ暑かった。

長時間の車の運転と買い物で体力もすっかり消耗。

ようやく我が家にたどり着き

とりあえず何か食べようと

母からもらったスイカを食べた。

 

イカを食べるのは、数年ぶりだった。

一口食べたら、なんだかもう、手が止まらなくなった。

そうして、気が付いた。

「スイカって、こんなにおいしかったの~~」。

 

以来、母がスイカを買うのに、嬉々として付き合う。

母とスイカにあっさり懐柔されてしまった

今年のワタシの夏である。