いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

「おひとりさまの老後」上野千鶴子

 

おひとりさまの老後

おひとりさまの老後

 

 この本を読む前に

この本の後に書かれた本

「みんな「おひとりさま」」をうっかり先に読んでしまった。

 

予備知識を仕入れたうえでの読書は、読書の楽しさを半減させかねないが

この本に関しては、予備知識があったがゆえに

すらすらと読み進めることができた。

 

そして、やはり、そうだった。

「みんな「おひとりさま」」で著者が語っていたとおりだった。

この本は、団塊世代のおひとりさまをターゲットとした本である。

戦後、この国の右肩上がりの経済成長の中で、多くの時間を

過ごしてきた人向けの本である。

つまり、一定の資産形成ができて老後を迎えた

おひとりさま女子にターゲットを絞った本であった。

 

もし、この予備知識なしに、この本を読んだとしたら

すらすら読むことなどできなかっただろう。

世代間格差にうんざりしたり

世代間対立の怒りを覚えることなく

どこか遠い国の他人事のように読むことができた。

おかげで、ワタシ世代の老後は、本著とは全く別物の老後になるだろうな

ということは確信できた。

 

就職する頃には、右肩下がりの経済下で長いこと過ごしてきた

団塊ジュニア氷河期世代であるワタシのような世代や

さらには、生まれた時から右肩下がりの状況しか知らない

若い世代にとっては、そう、この本は、参考になる本ではないのだ。

 

団塊世代のおひとりさまのよりよき老後のカギを握るのは

家族ではなく、資産、友人、介護保険、介護行政と著者は言うが

資産を築く余裕もなく、将来の年金も危うく

介護保険や介護行政も危うくなりそうな団塊以降の世代にとっては

机上の空論でしかない。

 

そして、もう一つ。

ワタシは、著者が言うほど、友人を頼りにできるかということには

懐疑的である。

団塊世代の友人という概念は、団塊以降の世代にとっての

認識とは幾分違うのではないだろうか。

子どもの頃から、空気を読み、同調圧力の中で生きてきた若い世代にとっての

友人は、もはや知り合いの域ではないのだろうか。

 

この本は、確かに団塊世代のおひとりさま女子むけに書かれた本ではある。

けれど、本著のターゲットでない人も読む価値はあると思う。

この本を読めば、自分自身の老後を自分で考える機会になることは必至だ。