物語の面白さに引き込まれ、あっという間に読み終えた。
ワタシの中の小説ランキングで、5本の指に入ることは確実だと
上巻を読みながら、早くも確信した。
戦前、朝鮮半島が日本の統治下にあった時代からこの物語は始まる。
戦後の高度成長期を経てのバブル期までの
朝鮮人家庭の4世代を描いている。
それぞれの世代が、それぞれの時代を必死に生き抜く姿。
ままならない暮らしの中でも、地道にそして誇りを失わずに生きる彼らの姿は
読み進めて間もなくすぐに頭の中にすぐに映像として立ち上がるだろう。
この小説は、家族の物語を主軸に
男女間、兄弟間、親子間、日本人と朝鮮人の関係
さらには、日本と朝鮮の歴史的問題
在日コリアンへの差別的人権問題
朝鮮半島の南北問題、そして豊かになった日本の日本人の不幸を
主人公家族が直面するさまざまな問題からそれらをサラッと浮かび上がらせる
物語構造は圧巻であった。
この本は著者が構想から30年かかって完成した本なのだそうだ。
戦前戦中の記憶をなくそうとしている今の日本人こそ読むべき物語である。