いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

配達のありがたさ

昨日、クッションカバーを夏用にしたいと思い立ち
ミシンを取り出して、カバーを作った。

20代半ばで買ったこのミシン。
裁縫をすることもなかった独身の頃の私が
なぜミシンを買おうと思ったのか
今ではその理由も思い出せないが
買ったその日の光景を今でも鮮明に覚えている。

当時は、今のようにネットで何でも買える便利な時代じゃなかった。
お目当てのものがあれば、その売り場に足を運ぶことが普通だった。
ミシンを欲しいと思った私は
デパートの布地売り場に行くことにした。
そこで、定価10万円を7万円で売られていたミシンを買うことに決めた。

店員さんに『これください』といって、そのミシンを買った。
その買ったミシンを私は当日持ち帰った。
ミシンって結構重たいんだよね。
それを駐車場までひとりで運んで車に乗せた。

なぜ、当日持ち帰ったのか。。
それは、早く使ってみたかったわけでも何でもない。
私の頭の中から『配達』という手段が抜け落ちていたからに他ならない。

私の「ノン配達」エピソードには、もうひとつ忘れられないものがある。
それは、ミシンより軽かったが、ミシンより大きく
持ち帰ったのは、車ではなくバスだったという。。
それは、なんと、扇風機。。

大学生の時、エアコンのない部屋に住んでいた私は
夏場を前に扇風機を買うことにした。
初めての土地での、初めて迎える夏。
そして、自分ひとりでの初めての大きな買物(値段的にも大きさ的にも)。
駅前のビッグカメラで、扇風機を購入。
田舎から都会に出てきたばかりの18の小娘だった私は
もちろんこのときも世の中に『配達』という便利な手段があることが
頭から抜け落ちていた。

扇風機を買い求めた私は、大きな箱を抱えて店を出た。
そして、そのまま駅前のロータリーへと向かった。
バス停へ並び、バスが来ると、扇風機を持ってバスに乗り込んだ。
今なら、扇風機を持ってバスに乗り込むなど
とても考えられないが
若さというものは、本当にすごい。
とはいえ、本当は恥ずかしかったのだ。
そして、そんな私の姿を見ても、誰も声をかけることのない
都会の冷たさに、惨めさも加わって、ちょっと悲しい思い出なのだ。

今は、お店に足を運ばずとも買物できる。
ネットで注文すれば、配達してくれるのが当たり前だが
扇風機とミシンをひとりで運ぶという小娘時代のある私は
配達というのは、本当に有り難いなあとしみじみと思うのである。