経済小説は、めったに手に取らない。
経済用語が頻繁に飛び交い、登場人物が多く
それらを追うのに精いっぱいでなかなかストーリーを楽しめないから。
とはいえ、そんな苦手なこの類の小説も時々読みたくなる。
そういう時は、どうにもならない社会へのもどかしさで
うつうつとしている時のような気がする。
現在、このコロナ禍で、政府の無能ぶりをいやというほど見せつけられる毎日。
この本を手に取ったのも、なるほど当然なのである。
バブル崩壊で不良債権処理をめぐる政府、日銀、銀行の動きによって
罪なき人が死に追いやられる。そして、巨大な組織に個々人が復讐を挑んでいく物語。
巨大組織の個人攻撃は、小説の世界の話ではなく、現実世界でもあらゆる場所で行われている。
しかし、この巨大な組織に個人が挑むことが、現実世界でもあるのだろうか。たとえ、挑んだとしても、現実は、システムの暴力が個人を強力に無力化する。
巨大組織の闇に迫り、復讐を果たす。
小説は、小説でしかありえないのだろうか。