いのししのひとりごと

ワタシノトリトメナイハナシ

露地モノ

目の下の紫色のクマ

深々と刻まれたほうれい線

毛穴の目立つ頬

笑顔も封印したくなるカラスの足跡

艶どころかテカリさえも失ったカサカサ肌。

これは、そう、ワタシの肌状態。

こんなだから、肌がきれいな人を見るとうらやましくて

たまらなくなる。

 

子どもの頃から、あいにく大きな病院に縁があって(患者としてね)

ワタシの人生、入院したり、通院したりする機会が

断続的にあるんだけれど

そのたびに思っていたことがある。

「看護婦さんって、なんて、肌がキレイなんだろう」

ここで、あえて、看護師さんではなく、看護婦さんというのは

男性看護師の肌をまじまじと見たことがないからであります。

 

もちろん、すべての看護婦さんってわけではないんだけれど

それでも、おおかたの看護婦さんの肌は

白くて、つるつるすべすべで

いかにも水分をたっぷり含んだふっくら肌。

 

色の白いは七難隠すとは言うけれど

色白の部類に属すと思われるワタシの肌は

難を隠すどころか、クマやシミを際立たせている。

それに比べ、看護婦さんたちの肌ったら

色白のうえに、良好な肌状態。

同じ女の肌なのに、なにゆえ、こんなに差が出るのか!

 

デパ地下の高い基礎化粧品を使ったこともあった。

洗顔が大事と通販のお高い石鹸を買ったこともあった。

一時期流行った顔をコロコロする美顔器みたいなもので

暇さえあれば、顔中をマッサージしていたこともあった。

今のワタシの肌は、その努力もむなしさの結晶みたいなものである。

 

看護婦さんのピカピカの肌を見ていると、これは何か裏があるのではと

嫉妬の混じった猜疑心が浮かんできた。

病院と言えば、薬だ。

看護婦さんたちは、市井の女どもをしり目に

肌がキレイになる薬をこっそり手にすることができるのだろうかと

肌ドーピングまで疑う始末。。

 

そんなワタシの汚い胸の内が夫の前でポロリと漏れ出たところ

夫は、しれっと、こう言った。

「日光に当たらないからなんじゃないの!?」

 

あーー、そうか。

看護婦さんたちの職場は、当たり前だが病院。

紫外線がカットされた屋内で

温度と湿度が管理された快適な空間で

一日の多くの時間を過ごしている。

つまり、看護婦さんたちの肌は、ハウス栽培。

 

一方、掃除だ、買い物だと

屋内と屋外をやたらめたらに行き来し

そのたびに、否が応でも紫外線や気温差にさらされる

ワタシの肌は、露地栽培。

 

さらには、肌質というのは、コレステロールがおおいに関係しているらしい。

肌は、たんぱく質や脂質でできているから

コレステロールが豊富な人のほうが、もちろん肌は生き生きとするはず。

血液検査のコレステロール値が低いことを密かに自慢に思っていた

過去の自分が、本当に恨めしい。

 

つまり、今回の考察で、ワタシは

肌質というのは、遺伝と環境によるとの結論に至ったわけであります!!

 

顔のつくりやスタイル同様、肌もご先祖様から引き継がれた遺伝子で

大病院の看護婦さんのようなつるつるのお肌を

ワタシも手に入れたいと懇願しても、無理な話。

それでも、どうしても欲しければ

本当にドーピングレベルのことになるんではないのか!?

看護婦さんの肌ドーピングを疑った身でありながら

実際自分がドーピングすると想像すると、

怖がりのワタシは、きっと

いやいやこのカサカサ肌で十分でございますと

そそくさと退散するに決まっている。

 

自分の肌に無限の可能性を夢見て

努力は実ると、デパートで美容部員のおねいさんに言われるがままに

基礎化粧品を買い求め、散財したあの日から幾星霜。

今や、498円のハト麦化粧水を愛用し、

露地栽培の畑にたっぷりと水を撒く。

自分の肌にも、自分の懐にも背伸びをさせないくらしが心地よい。