いわゆる普通の日常に価値を見出せなくなった時
人は、生きる意味を失う。
会社に勤め、家族を持ち、社会システムに組み込まれてしまうことが
人間が生きるということなのかという疑問は
多かれ少なかれ、誰しもの人生の中で一度は浮かんでくるものではないだろうか。
主人公は、この人間の営みに嫌気がさし、生きることをやめることにした。
そうして、自殺を図るものの、失敗してしまう。
生き残ってしまった彼は、自殺するのではなく、命を売ることにした。
命を売るという商売の中で
主人公はアングラと繋がってしまう。
しかし、そこで出会う女たちを愛し 愛されることで
命など惜しくないと思っていた彼は
いつしか生に執着することになっていく。
一見、ありがちな物語だが、そこは三島由紀夫だ。
先が見えそうで見えない、ストーリー展開と
深刻に捉えがちなテーマを、時に滑稽に笑いにするのは
三島の筆でしかありえない。
命に対して冷め切っていた主人公が
最後には、笑ってしまうほどかっこ悪くなる。
生きるということは、スマートでもなんでもない。
泥くさいことなのだ。
三島は、そう言いたかったのだろうか。