本の副題は「原発危機と東大話法を越えて」である。
この世界が「幻影」であるという根拠は
日本においては、「原発」と「東大話法」に集約される。
幻影から脱出するには、原発危機と東大話法を越えていかなければならない。
最終章にたどり着いたとき
メインタイトルとサブタイトルに込められた意味が胸に響く。
なぜ、東大話法や原発という世界を混乱に陥れるものが
それでも存在するのか。
「世界は発狂している」というベイトソンの言葉によって
丹念に説明が施されている。歴史の一時点において、この世界は発狂し
いまなお発狂し続けている。
発狂とは、本質から目を背けるための欺瞞や隠ぺいであるということだろう。
東大話法は、欺瞞や隠ぺいのための手段であるし
原発や、欺瞞や隠ぺいによって作り出された構造のピラミッドの頂点のようなものだ。
欺瞞や隠ぺいをなくすことが、世界の発狂を止めることにつながる。
そしてその手段は、欺瞞や隠ぺいから最も遠い存在である
「こども」によって導かれるべきであるという結論に
著者はたどり着く。
最後に、放射能についての解説がある。
原発のすさまじい欺瞞と隠ぺいの現実が静かに語られている。
2012年に書かれたこの本が、今読んでも全く古びていないのは
世界の発狂が止まるどころか強化されている表れであろう。